自然のもたらしたもっとも自然な道、それが渓谷、

            自然と一体化する旅、それが沢登り

緑したたる山懐に深く切れ込むあくまでも清冽な水の流れ、このひんやりとした冷たい渓谷の水の流れの中に足を浸し、シャワーを浴びながら滝を登り、渕や釜をへつり、極端に狭まった薄暗い廊下を腰までの徒渉で通過したり、スノーブリッジを潜りぬけ、そして次は何が現れるかと、期待と不安に心躍らせる。美しいナメ滝やナメ床に感動し、広々とした河原に憩う。また、沢には、遡行の楽しみ以外にも多くの自然の恵みがいたるところにあります。渓谷には幻の魚といわれる岩魚が住み、春はウド、ワラビ、ミズナ、コゴミといった山菜、秋には、ナラタケ、なめこなどのきのこ類が豊富だ。夜は、遡行の合間に釣り上げた岩魚や、山菜、きのこが食膳をにぎわし、濡れた体を豪勢な焚き火で暖め、友と酒を酌み交わし、一日の遡行を語らい、振り返る。このように沢登りには、様々な変化を次々と見せる渓谷、まわりの自然を身体ごと味わい、享受し、登山のありとあらゆる技術を駆使して、自分たちの進むべきルートを自分たちで探し、道をつけていくという楽しみがあり、ハイキング、縦走、岩登りといった登山形態が失ってしまった自由があります。

沢登りは、自然の真っ只中に入り込み、大自然の中に身をゆだね、その中で自己満足的な充実感を見つけ出すものですので、山を知り、山の恐ろしさを十分にわきまえることが必要になります。山を総合的に知り、山と臨機応変に対応する力を要求されるのがまた沢登りです。

沢登りは、解説書を読んだだけで誰にでも出来るものではありませんが、しっかりとした指導者と山行を共にし、現場で指導を受けることによって、初心者でも十分に楽しめるものです。沢には、個々人の技量、体調によって困難さと安全が選択できる懐の広さがあります。遡行技術を身につけ、山裾から2泊、3泊かけて長大な渓谷を遡行できるようになったとき、また沢から沢へ、沢から頂へと、山谷を縦横無尽に歩き回れるようになったとき、山登りが何倍にも広がり、沢登りのほんとうの楽しさ、魅力を知ることが出来るようになります。